2010年4月23日金曜日

サスピシャス・マインド



サスピシャス・マインド

 エルヴィス・プレスリーの1960年代、最後を飾るヒットチャート、ナンバー1になったヒット曲、それが<サスピシャス・マインド>だ。

この曲に馴染むのに随分時間がかかった。自分の中の純粋ロックンローラーとしてのエルヴィスは<悲しき悪魔>で停止したままだった。そこから遠く離れようと、何しようと、<悲しき悪魔>は鳴り響いていた。

そこへ<明日への願い>であろうが、<サスピシャス・マインド>であろうが、<悲しき悪魔>の続きはどこへ行ったのかという感じであった。キース・リチャーズが、「ロック、ロックって、ロールはどこへ行ったんだ。」というのと同じだ。ロールはケーキになって食べつくされていると知ったら、ロックンローラーは腰を抜かす。そうだ、<明日への願い>にも、<サスピシャス・マインド>にも、腰を抜かす思いだったのだ。

年月は経過したのだから、と言われても、やっぱり、納得できないほどキングの冠を盗んで来たかのようにお冠だったのだ。

 第一、3分一本勝負が命のプレスリーらしからぬ、この長ったらしい、それはシングル盤のルール違反だったのだ。やがて傑作<バーニング・ラブ>が<悲しき悪魔>を継承したことで、やっと納得するのだが、この曲に対するモヤモヤは長く残ったままであった。モヤモヤが晴れたときキング再降臨、プレスリーはエルヴィスに変わったのだ。

その不満も手伝ってまこと恐れ多いことだが、<サスピシャス・マインド>は「チンドン屋さんの右往左往」と決めつけていた。

ところが、ある夏、旅先のスーパーの駐車場で聴いていた夜に、この長ったらしい曲が、大売り出しの曲に聴こえていた瞬間に、突然雷雨、電撃に打たれたように、とても美しく激しく躍動し始めたのだ。

 それは解放された戦うエルヴィスたちの行進だった。

*罠にかかったよ、どうやってもぬけられない
ベイビー、
君を愛し過ぎているから
気づかないのかい、僕に何をしているか
僕の言葉など一言も信じてくれないで

**疑いの心を抱きながら、一緒にやっていけはしない
疑いの心の上に、夢など築けるはずもない
古い友人にばったり会って、挨拶をかわしたなら
君の目には疑いの色が浮かぶのだろうか
同じことのくり返しさ、僕の行き先を問い詰めたりして
この涙が本物だってわからないのかい

**くり返し君は二人の愛を続かせようとも
泣くのを止めようともしない
せっかくの愛を無駄にするのはやめよう
ハニ-君に嘘などついたことはないよ

*くり返し

***罠にかかったよ
どうやってもぬけられない
ベイビー、君を愛し過きているから

***くり返し


 『オーロラの彼方』『ブラックホーク・ダウン』、身体を張って戦う男たちを主人公にした映画に流れる<サスピシャス・マインド>
身体を封印されたデビュー当時の大騒動から兵役、映画活動、と長きにわたって封をしたままの肉体の躍動を炸裂させたステージへの回帰。なかでも<サスピシャス・マインド>はセックス・シンボルとして第一人者であったキングが、その解放をシンボリックにやってみせた傑作だったのだ。

大見得切ったステージさばきが、単なるポーズにならないのは、歌う程にエルヴィスの真実が汗になり、頬笑みになり、エルヴィスならではの空間が、やがて地響きがするような世界が創造されるからだ。

<好きにならずにいられない>になだれこむ大クライマックスとして重要な役割を担うこの曲は、自分の渾身を自分を向かわせ、最高の自分を観客に突進させるための仕掛けとして、それはエルヴィスの美学として、無邪気に輝いて美しい。

次々に打ち上げる炸裂弾が間違いなくそれを聴き眺める人々の心の中で爆発することを見届けるかのように、エルヴィスの瞳が、一点を見つめる時、実はステージの全員に向けられていることが分かる。

「いいか、いくぜ、間違いなくこの一撃を打ち込むんだぜ」・・・気魄が見える瞬間に、エルヴィスの肉体がステージに立つ全員の精神の入れ物になっていることが分かる時に、この男・エルヴィスの尋常でない生への挑戦が匂いたって、鳥肌が立つほどに美しい狂気を感じるのだ。

 かって4人でロカビリーの頂点に立ちしていたことを数十人でやってのけようとする時に、エルヴィスのロックンロールの神髄が煌めくのだ。そこにエルヴィスの不変、不滅の音楽の真実、エルヴィス・プレスリーの哲学があるように思えてならない。

 かって真っ暗な部屋の隅で、自分を抑え込みながらギターの音色にのせて解放していた魂、恥ずかしそうに一人の自分さえにも届かない小さな解放、それがサンの早朝のめざめによって等身大の解放に向かう時に、やがて4人を使って自分の扉の向こうに佇んでいた自分を表現するに至っては数え切れない世界中の青春たちの解放を促した。

 自身の歴史が一夜のライブに集約され、音楽が無数の自分に触れている爽快を思えば「ひと晩中、歌いそうだ」と語るのも、さぞかし無理のないことと思えるのだ。そしてその至福を味わう疲れを知らない子どものような男に向かって、「思いきりやってくれ」と言いたくなるのも、その爽快、無邪気に接することで、こちらもゲンキを頂戴しているからだ。

 時の経過に色褪せない、何度聴いても飽きることのない大傑作<サスピシャス・マインド>それは真っ暗な部屋の隅で、ギターを弾いて歌っていた少年の魂の絶叫なのだ。ジャンプスーツのエルヴィスを先頭にして、解放された幾人ものエルヴィスが鐘、太鼓で大行進する様が見えて愉しい。

『イン・パーソン』『ライブ・イン・ラスベガス』の<サスピシャス・マインド>が、特に好きだ。

* We're caught in a trap, I can't walk out
Because I Iove you too much. baby
Why can't you see what you're doing to me
When you don't believe a word I say

** We can't go on together with suspicious minds
And we can't build our dreams on suspicious minds
So if an old friend I know stops by to say hello
Would I still see suspicion in your eyes?
He're we go again, asking where I've been
You can't see these tears are real, l'm crying

** Repeat

Won't let our ove survive
Or dry the tears from your eyes
Let's don't let a good things die
Oh my honey, you know I never Lied to you

* Repeat

*** Don't you know l'm caught in a trap
l can't walk out
Because I Iove you too much, baby

*** Repeat




愛ピのエルヴィス・プレスリー コレクション

日本全国男前プロジェクト

ゲンキポリタンのじぶんぢから再生プロジェクト

0 件のコメント:

コメントを投稿